―様子を見るということの意味は― | |||||||||||||||||||||||||||||||||
こどもさんが何らかの病気になった時に、親の心配と、診察する医師の関心とは、往々にしてズレていることが多いものです。今回は、賢い受診の仕方とはどのようなものかについて、モデルを提示しながら考えてみましょう。 コメントこういう会話は、どこの診察室でも日常茶飯事に耳にします。どうして、このような内容のない受診になってしまうのでしょうか。折角病気になって、苦しい思いをしているのに、それが次に病気になった時に何の役にも立たない、そんな発展性のない受診の典型例です。会話がこういう展開をとげてしまうのは、患者(家族)の側にも医師の側にも、改めるべき理由があるわけですから、その理由をいくつか列挙してみましょう。 (1) このお母さんは、子どもさんの症状に対して、反射的に行動しています。熱 → 大変、脳が煮える(?)、→ 病院が閉まる前に受診しなくっちゃ →フーやれやれ、間に合っ て良かった、 → 診察、薬、3日分、3日分。 (2) 原因を問わないこと患者さんは、医師に対して常に原因を尋ねます。ところが、最初に診察した時点で目前の患者さんの病 気が、「カゼ」であると絶対の自信をもって断定できる医師は、おそらくいないでしょう。もちろん、 最初からはっきりと断定できる病気もあります。たとえば、水痘(みずぼうそう)、手足口病、とびひ、 数日たって症状の出揃った麻疹(ハシカ)、白色便の下痢症(冬季下痢症、大部分は、ロタウイルス感 染症)など。原因を知ることがどうしても必要であれば、種々の検査をしないといけなくなります。 ところが、実際の日常臨床では、多くの患者さんの診療を短い時間でこなしていかなければなりません から、ほとんど診察だけで済ますことになります。 (3)医師は、患者さん側に、看護上の最重要ポイントを指導しなければならない。大学病院や総合病院の外来のように、紹介患者さんをもっぱら相手にするような立場の医師は、原因診断を もっとも重視しなければなりません。病気の原因をきちんと突き止めて、それに対する過不足のない最適 治療をおこなう義務があります。また紹介した医療機関に対しても、原因を究めて納得のいく返事をするこ とが礼儀です。しかし、個人の無床診療所では、原因追求にエネルギーを費やすよりも、重症度診断と障害 部位の診断とを優先させて、くう・ねる・あそぶの経過を観察するように、患者(家族)に説明することが、 より重要であると私は考えており、日々の診療でもそのことを一貫して、強調しております。「カゼは万病 のもと」であるとか、「カゼをひかせないように」などといった、何の役にも立たないことは言わないよう に心がけています。次号では、望ましい診療風景のモデルを提示して、この問題を再考します。皆さんも、 どのような「問いかけ」が、医師から最も有益な情報を聞き出せるか考えて下さい。 患者さんの側が、医師につたえるべき情報
医師の側が、患者さんに是非伝えないといけない情報、および聞き出すべき情報
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