2000-10

               一木こどもクリニック便り 西暦2000年10月(通算46号)

シドニーオリンピックも終わり、日本勢の活躍には何度も感激しましたね。今はまだ体力も備わっていないちびっ子さんたちも、すぐに成長してメダリストになる日がくるかも知れません。また初めて、韓国と北朝鮮の選手が手をつないで入場行進を行い、世界中に感動を届けました。まもなく21世紀。スポーツ・文化・教育・産業を通じて、平和な世界の実現を願っております。

 「こどもの病気の診かたと看かた
 (39)インフルエンザワクチンについて」

例年、インフルエンザらしい患者さんが受診し始めるのは、クリスマスの1週間ほど前です。ワクチンを接種していても、発症そのものを完全に予防できるわけではありませんが、高齢者が重症化することに対しては、明らかに有効であるとされています。6歳未満の乳児・幼児に対しては、脳炎・脳症の頻度が高いため、ワクチンをしておいたほうが安心です。

脳炎・脳症がワクチンで完全に防げるかどうかは、まだ最終的な結論がでていません。当院でもワクチンを接種したのに、インフルエンザにかかってしまった人は結構います。点滴まで必要になる人も、毎年数名ですがおります。しかし、今まで、ワクチンを受けていた人で、入院が必要になるまで重症化したケースは当院ではありません。

平成12年1月から3月までの3ケ月間に、当院を受診されたインフルエンザおよびそれらしき患者さんは、697名(1人1カウント)で、ケイレンが11名、その内訳は、単純型熱性けいれん5名(点滴をして観察し、その日のうちに帰宅)、複雑型熱性けいれん5名(15分以上けいれんが続き、意識障害をともなう状態で、総合病院小児科に入院)、脳炎1名(3週間入院)でした。

この11名は、全員が、初めてインフルエンザにかかった人たちで、ワクチン未接種者です。しかも10名が6歳未満、1名が6歳2ケ月でした。6歳以下が危ないと言えるでしょう

流行開始の3週間〜4週間前までに、成人では1回、13歳未満の小児では2回 (1回だけでは十分な抗体ができにくいため)ワクチン接種を完了しておくことです。2回接種の場合、昨年までは、初回と2回目の間隔は1〜4週間ということでしたが、十分な抗体をつけるには、3〜4週間あけた方がよいということになりました。

インフルエンザワクチンは、もっとも安全なワクチンのひとつで、アメリカ合衆国予防接種委員会の勧告では、妊婦さんに対し、妊娠期間のどの時期にでも接種可能としています。天然モノにかかると、39℃〜40℃が数日続くので、胎児に危険がおよぶ可能性が生じます。

インフルエンザには、A, B, C, の3種類があり、A型はさらにA香港型、Aソ連型、に分かれます。C以外のA香港、Aソ連、Bの3型が毎年、組み合わせを替えて混合で流行します。ワクチンには流行型が3型ともすべて入っております。A香港型、Aソ連型については、毎年、少しずつウイルスが変化しており、ワクチンに使用されるウイルスも毎年変更されています。ワクチン製造には、発育鶏卵が必要ですが、その調達ができる農家(ファーム)は限られているため、一気に増産ができるわけではありません。十分なワクチン供給態勢がととのうまでには、あと数年はかかるでしょう。  

  「こどもの病気の診かたと看かた
     (40)ハナとノドの保護について」  

お年寄りの方が、ハナの前に湯のみを両手で抱えて、ズズーッと渋茶を飲んでいるような光景を見られたことがあると思います。ハナに湯気を通し、ノドを潤し、ついでに緑茶のカテキンという抗菌成分で、インフルエンザなどのウイルスが粘膜に付着するのを予防しようとする、まさに一石三鳥の生活の知恵でしょうか?こうしておくと、野良仕事にでて、土ボコリやワラくずなどのホコリを吸っても、結構ノドは守られるというわけでしょう。

私も毎朝、歯磨きの後で、白湯(さゆ)でうがいをします。ガラガラペーではなく、3分間ほど、白湯を口腔内にためて、じっとハナだけで息をするのです。やがて、ハナの穴に結露が生じてきます。のどの奥にそのハナ汁が流れ込みだしたら終了。ペッと出して、ハナはチンとかんでおしまい。これで少なくとも半日は快適。時間があれば、昼と夕方にも実行しております。

気温が下がり空気が乾燥する季節になると、必ずノドやハナをやられます。皆さんも是非、このような方法を試してみてください。予想外の効果に驚かれますよ、きっと。緑茶や紅茶の煎じカスでうがいをするのも良い方法です。毎月の医療費が助かることでしょう。   

 「こどもの病気の診かたと看かた
 (41)心の問題への対処で重要なこと」   

あんたは、何で、人の自転車やら盗んだとね?おまえは、どうして、お父さんの言うことが聞けんとや?何で、先生の言うとうりにせんとや?どうして、こげんこつが分からんとや? あんたちゅう子は、お母さんの言うことば、じぇんじぇん聞いとらんばいね、なしてかねえ?

家庭・学校・職場で、1日中、このような会話がくり返されていることと思います。

普段は目立たない、あの少年がどうしてこのような凶悪犯罪を? 何が少年を凶行に走らせたか?なぜ、このような異常な事件が起こってしまったのか?

報道メディアの発想も同じです。異常な事件や事故では真相究明をしたいのが正常な反応です。健全な精神力を有しているはずの人が引き起こした事件・犯罪では、原因・理由を問うことは、おかしくありません。そうしなくても済んだはずの、別の選択肢を、当事者が認識し、理解することが再発・再犯防止に重要だからです。

しかし、ここでちょっと考えておくべきことがあります。不登校やひきこもりや、うつ状態など、心の活動エネルギーが低下している時には、なぜ、どうして、を問うよりも、まずゆっくりと休ませること、本人の中から再び活動の力(心的エネルギー)が湧き上がってくるのを待つことが大切なのです。

心が不安定になってくると、食欲が低下し、睡眠が不規則になり、それまでの日常業務(学校・職場へ行くこと、クラブ活動など)に支障をきたし、家族関係、友人関係などにも影響がでるようになります。要するに、食べる・眠る・遊ぶがわるくなります。お子さんがもしも、登校をしぶる・部活をいやがる(すなわち遊ぶに支障が見られる)というような症状を出し始めたら、なぜ、どうして、を問う前に、食べる・眠るの状態をじっくり観察し、対応を考えましょう

発行:(医)一木こどもクリニック (責任者 一木貞徳) 2000.10.13
住所:宗像市東郷下ノ畑394 TEL 0940-36-0880

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