2001-6

               一木こどもクリニック便り 西暦2001年6月(通算54号)


なかなかしつこい梅雨のようで、晴れ間が少ないですね。蒸し暑いので、どうしても冷房や除湿をしがち。エアコンでのどが乾燥すると、朝起きたときにノドが痛い、カラ咳がでる、しかもえんえんと続くという傾向が見られます。緑茶のうがいは効果的です。漢方薬の麦門冬湯(ばくもんどうとう)というエキス製剤も著効します。エアコンを使用するときには、効率がわるいようでも、隣の部屋とのあいだのドア(ふすま)を少し開けておくと、こどもさんやお年寄りにマイナスが生じにくいのです。

 こどもの病気の診かたと看かた
         (51)夏かぜについて


手足口病やヘルパンギーナなどの夏かぜが少しずつ増えています。病原体はどれもエンテロウイルスです。このウイルスはのどから侵入して、おしりからでていきます。熱のほかに腹痛や下痢・嘔吐をともなうこともあります。

いちど感染すると、ウイルスは5週間くらいからだに居座ります。そのあいだ周りの人にうつしていることになります。幼稚園や保育園などに通園していると、うつされずに済むことはなかなか困難で、本当に流行を遮断しようと思えば、患者さんに5週間も休園していただくしかありません。しかしそれは困難でしょう。


もっとやっかいなことに、エンテロウイルスにかかっていながら、まったくそれらしい症状がなくて気付かれないこどもが結構いることです。もちろんそのこどもさんたちも、他のこどもたちにうつすのです。その場合、保護者の方としては、まさかわが子が、ウイルスをばらまいているなどとは夢にも思っていないでしょう。

まわりで手足口病やヘルパンギーナが流行しているのに、さいわいわが子はかからずに済んだ、でもまだかかるかも知れないから、かかっている(=症状の出ている)よその子どもさんには登園して欲しくない、と思っている保護者の方は多いのですが、何と実は、すでにお子さんはバッチリかかっていて、無症状の保菌者として、流行拡大に一役かっているかも知れません。夏かぜとはそういう病気なのです。

潜伏期間も数日から1週間くらいで、施設内での流行はだらだらと夏休み開始まで続きます。夏かぜをくり返し経験して、毎年たくましく成長していくわけですね。

 こどもの病気の診かたと看かた
      (52)急患センターの受診について


夜間に急な発熱やけいれん、嘔吐、喘息の発作などで、急患センターを受診された経験のある方は多いことでしょう。とくに夜間はふだんのかかりつけ医療機関が開いていない時間帯であるため、心理的不安が強くどうしても朝まで待てずに受診してしまうという傾向が見られます。

小さいお子さんの場合は、ご両親の不安はなおさらだと思います。乳児は言葉で病状を訴えることができないので、どこが悪いのかわかりにくいからです。ただ泣くだけ、とか急にぐったりしてきた、という場合には、どのように対応して良いのかわからず途方に暮れることでしょう。

ところで、小児の救急医療に従事している小児科医は、夜間の小児科救急外来の利用をどのように見ているのでしょうか。関東地区のある市民病院の夜間救急外来の調査ですが、何と小児科急患の中で、本当にその時間に受診が必要と判断されたケースは8%くらいだったというのです。

ある総合病院の救命救急センター小児科の調査でも、小児科急患の60%くらいは、その時点では受診が不要か、あるいは翌日の受診でも問題ないと判断されたケースであったという結果です。

急患センターの診療に大学病院からこられる先生方のお話では、急患センターには、本当に必要な患者さんだけが受診して欲しいとのことです。 極端な話ですが、急患センターでは救急車で受診する程度の患者さんだけを診れば良い、という意見もあります。    
では時間外でも受診が必要な方とは、どのような患者さんでしょうか?    

それは、「食べる・眠る・あそぶ(動きまわる・喋る)」などの全身状態がどれも良くない患者さんのことです。この3拍子がそろって悪い患者さんが、深夜に急患センターを受診して、「来なくても良かった」などと言われるはずはありません。    

「家で安静にしていれば、あと数日で治る」とお墨付をもらったとしても、その夜に突然ぐったりしてきたならば、そこで急患センターを受診することが必要です。頭や心臓などの大切な場所に病気が広がると、急変することがあります。それらは、病気の初期には気付かれにくいものですが、時間とともに明らかになってきます。       

こどもさんの看護に当る保護者の方々は、ただひたすら全身状態、つまり「食べる・眠る・あそぶ」の変化を見届けるように注意してください。その3拍子がキープされていれば大丈夫です。悪くなる病気、最初軽くてもこじれていく病気は、必ず、この3拍子が悪くなってくるからです。    

お知らせ】屋内でのダニの発生は、梅雨明けにピークになります。押入れの掃除、乾燥維持にご注意ください。梅雨明けは結構アレルギー症状がでやすくなります。     

発行:一木こどもクリニック 2001-6-28:宗像市大字東郷394番地(文責:一木貞徳)電話0940-36-0880

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