1999-3

            一木こどもクリニック便り 1999年3月号(通算27号)

【こどもの病気の診かたと看かた
          (21)春からふえる病気】

「インフルエンザが終了したと思ったら、早くも夏かぜと思われる患者さんが多数出現しています。夏かぜは、インフルエンザとくらべると、@潜伏期間がやや長い、A家族全員がかかることは少ない、Bいろいろな症状(発熱、頭痛、おう吐、下痢、腹痛、のどの痛み、胸の痛み、いろいろな発疹=ぶつぶつ、口内炎など)が数日間にわたって、ちょぼちょぼと出現、C重症感のある患者さんが少ない、などの違いがあります。

それに混じって花粉症の患者さんもいます。はなミズ、はなづまり、くしゃみ、眼のかゆみ、はなや眼の周辺の熱感などのよく知られている症状のほかに、頭痛、頭が重い感じ、全身のだるさ、食欲低下などを自覚します。これまで一度も花粉症になったことのない方の場合には、軽いカゼとまちがうこともあります。しかしカゼと違って症状は2週間以上つづきます。空気が澄むゴールデンウイーク頃にはほぼ終息します。

起立性低血圧による症状で受診される方もいます。朝起きるのがつらい、午前中の体調不良、食後かならず眠くなる、立ちくらみ、よくため息をつく、顔色が悪い、腹痛・頭痛を訴える、などです。この場合には、ゴールデンウイークをすぎて症状は悪化し、梅雨とともに一層ひどくなり、夏休みに入ってようやく目立たなくなります。朝いつまでも寝ていられるからです。漢方薬が効きます。昨年5月号を参照してください。

ややこしいことに、それらのいずれでもない状態、本音は「学校に行きたくない」高学年の児童や中学生が混じります。このこどもたちは皆、からだの症状を訴えて受診します。微熱、頭痛、腹痛、食欲がない、などです。それらの症状のために「学校に行けない」と本当は言いたいのです。決してストレートに「学校はイヤだ」とは言いません。

このこどもたちに対しては、どのような病名やお薬を用いても、はっきりとした手ごたえがありません。頭痛や腹痛などの症状がしばらく消えたとしても、やがて必ずまたいろいろ訴えるようになります。そしてただ「学校には行っていない」という事実だけが積み重なっていきます。いわゆる「不登校」です。当の本人にとっては、症状が消えることが本当の願いではなく、「学校という場から逃れること」が目的だからです。

不登校が考えられる場合、たとえ初回の診察で疑いをもっても、気付かぬふりをしてしばらく'泳がせる'ことがあります。そしてからだの症状の変化を見ていきます。学年替りなどの環境の変化でいつの間にか訴えが消えることもあります。しかし将来同じような状況に立たされたときに、また不登校になることもあります。

新学期に多い'こころ'の問題

新学期は、期待や不安がふくらむときです。学校の先生方も、新しい生徒を担当すると、そのこどもの個性がつかめるまでにかなり時間のかかることがあります。新しいクラスでは生徒同士、あるいは先生と生徒の間にもいろいろな緊張がみなぎります。 その緊張がプツンと切れたときに、生徒の不登校や先生自身の休職が姿を現します。

こどもの'こころ'に関わる問題が明らかになってきたときに、親として大切なことは、「あなたにはお母さんがずっとついていてあげるからね。」という保証です。こどもが12〜13歳くらいまでは、その保証がもっとも重要です。 母親の後ろには父親がいる、という安心感、安定感もこどもには必要です。

しかし14歳からは別の立場、「あなたの人生はあなた自身で決めなくてはいけない、自分で選択した生き方を親や他人のせいにしてはいけない。」ということも教えなければなりません。女子の場合には、この境界が12歳となります。 干支(えと)をひとまわりして、こどもは大人の世界に入ります。

からだの異常でもこころの異常でも、基本は同じです。よく食べ、よく眠り、生き生きと活動していればたいした異常ではありません。家族との食事をさけたり、受験生でもないのに夜おきて昼寝る生活、ならば異常が進行しつつあると想像するべきです。

人間とはほんらい「人と人の間の存在」なのですから、家の中で家族の誰ともほとんど会話をしない、となればそれは異常を示すサインです。すでに「人と人の間でない存在」になりつつあることを示します。
'自閉'は、精神の病気や'こころ'の病気を示す、大切な手がかりです。

精神分裂病や境界型精神病、うつ病なども思春期にはしばしば見られます。分裂病の初期には、着衣や洗面に関心を示さなくなったり、意味不明な笑いを示すことがあります。突然凶暴性を示すこともあります。これらは思春期には正常でも見られる現象ですが、精神の病気では'他者への共感を欠く'ことが特徴です。 精神の病気は不登校などよりもさらに厄介です。季節には関係ありませんが、こどもにかかわる立場のひとたちは知っておくべきでしょう。
'こころ'をのぞく必要はありません。「食う・ねる・遊ぶ」を見てください。


【お知らせ】

♭ 宗像市の地域振興券が当院でも使えます。期限は3月23日から9月22日までの 半年間のみ。
  他の市町村のものは使用できません。
♪「喘息日記」の最初のページをK・U君のお母さんがワープロで清書してください ました。
  またワード97原稿のフロッピーもいただきました。感謝いたします。

発行:医療法人 一木こどもクリニック 1999.3.30
住所:宗像市東郷字下ノ畑394 TEL 0940‐36‐0880

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