くろ通信00-10

一木こどもクリニック便り 西暦2002年10月(通算70号)

ノーベル賞に3年連続日本人が選ばれました。今年は物理学賞に、ニュートリノ研究で天文学に新時代を築いた小柴さん。化学賞はレーザータンパク構造解析の田中さん。政治・経済・外交ともに暗いニュースしかない日本にとって元気のでるニュースです。さて秋色も深まってハイキングの季節になりました。天気が続きますように。
「こどもの病気の診かたと看かた(89)習慣的思い込みによる重大事故」
30年ほど昔になりますが、自動車メーカーのA社だけ、マニュアル車における変速ギアの配列が他社の車と違っていました。A社の車で運転練習していた友人は、試験では他社の車だったため、踏切でギアをいつも通り低速にしたつもりがバックに入り、その場で落第になったそうです。

私が医師になった頃は、麻酔器の操作ミスによる麻酔事故が相次いでいました。麻酔器には@酸素(O2:緑色のバルブ)、A笑気(N2O:青色のバルブ)、B圧縮空気(Air:薄茶色のバルブ)の3ケのバルブとホースがあります。

現在でこそ、この色は各社統一されていますが、以前は酸素だけが緑で、残る2系統の色はメーカーごとにまちまちでした。大学病院の機械に慣れた医師が出張先の病院で、不慣れな別メーカーの機械を操作するときに、うっかりミスが誘発されても何らおかしくない状況だったのです。

当院のトイレや流しに使用されている水道栓は、レバーを上げると止まり、下げると水が出ます。ところが自宅の手元栓はその逆なので、最初の頃はクリニックでも自宅でも、しょっちゅう失敗をしました。
最近は慎重に操作をしていますが、それでも時々うっかり間違えます。

水道の操作では重大事故にはならないでしょうが、麻酔器や車の変速器では、一歩間違えると重大な事故に直結しかねません。それらの操作は“慣れ”の延長で行われる、つまり習慣的思い込み操作が多く、本人の不注意だけを問うことは決して問題の本質的解決にはならないからです。

私たちの身の回りを点検してみると、基本的仕様部分のデザイン不統一にもとづく、事故誘発可能性を秘めた工業製品がかなり多いのではないかと思われます。

生命の安全性に結びつきかねない製品では、基本仕様に限っては、各社の個別デザインをぜひ統一してもらいたいものですね。幼児の玩具などにも同じことがいえるように思います。
「こどもの病気の診かたと看かた(90)クリームと軟膏(つづき)」
前号でクリームは親水性で汚れを落とす作用、軟膏は親油性で保湿と皮膚保護作用という説明をしました。クリームはあとで落とすことを前提にしており、皮膚への刺激性は軟膏より強いのです。ただしステロイドの場合には、軟膏だけでなくクリームも皮膚への刺激性は弱くなります。

これは、基剤がクリームであるか軟膏であるかの差よりも、主薬であるステロイドの作用が前面に出るためです。ちなみにアトピー性皮膚炎の炎症を抑えるには、ステロイド外用薬しか効きません。しかし荒れて乾燥した皮膚を外からの刺激から守るためには、保湿剤の併用が必要です。
「附録:父と子のええ会話」
男児:父ちゃん、ノーベル賞って知ってる?
父親:あったり前だのクラッカーよ、とし坊。そいつは頑張ったらもらえる賞だな、
きっと。運動会の一等賞みたいなもんだろさ。
男児:何だか怪しいなあ。じゃあスーパーカミオカンデってのは何なの?
父親:そりゃあ、とし坊のことさ、いつもハナ垂らしてるだろ。
男児:??
父親:だからさ、スーパー行って、紙を買って、ちゃんとハナをカンデくれってさ、
そういうことじゃあないのかい?
男児:なあんだ、そうだったのか、父ちゃんは何でも知ってんだね。
父親:そうよ。とし坊もハナかんでさ、その何とか賞っての狙わなくっちゃな。
父ちゃんも応援すっからよ。ワアハッハッハ…。

きっと、こういう家庭から将来のノーベル賞研究者が出るのでしょうね。学位を持たない技術屋のおじさんがノーベル化学賞受賞(島津製作所の田中耕一さん)で、日本中のおじさんたちも何故だか突然元気に?博士号持ってる大学の先生たちパニック?
【講演会のお知らせ】
   11月8日に、筑波大学心身障害学系教授の宮本信也先生による2つの講演会が開催されます。宮本先生は小児心身症の分野で日本を代表する小児科医です。
宮本研究室のHPは、http://www.human.tsukuba.ac.jp/lab/mslab/index.html

午後2時より、宗像市総合庁舎にて( 主催:宗像市児童虐待対策会議)
    演題:虐待を受けた子どもの心のケアー
    聴講対象者:児童虐待に関わる団体および個人(聴講無料)

午後6時より、福間町フクトピアにて( 主催:宗像校医会)
    演題:不適応行動をくり返す子ども達の理解と対応
    聴講対象者:幼稚園・学校関係者、心理・養護関係者(聴講無料)

【あとがき】10月に入って朝晩急に寒くなり、はなとのどをやられた子どもさんが増えています。治療が必要か否かは、「食べる・眠る・遊ぶ」の3拍子ができているかどうかで判断してください。

発行:(医)一木こどもクリニック (責任者 一木貞徳) 2002.10.10 :宗像市東郷394 TEL 0940-36-0880

|TOP|診療案内|こどもの病気の対応|ふくろう通信|心の相談室|ふくろう笑劇場|久能先生との対談|医療過誤問題|自己紹介|BBS|リンク|メール|医院地図|サイトマップ|