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一木こどもクリニック便り 西暦2003年3月(通算75号)

花粉が吹き荒れる季節。花粉症は、いったん発病したら、ゼロには戻れない病気です。症状の軽い重いは花粉の飛散量まかせ。根性だけではいかんともし難い厄介ものですが、コントロールはできます。生活環境の点検、仕事や学校に最適な治療の選択、それらを上手に行えばストレスが少なくてすみます。あきらめずに治療を続けましょう。
「こどもの病気の診かたと看かた (101) 花粉症と食物アレルギー」
スギ、ヒノキにアレルギーがある人は、メロン、パイナップル、キウイ、マンゴー、クルミ、ナシ、ナスを食べると、のどがイガイガしたり、唇がはれたりすることがあります。これは、スギの花粉とこれらの食品に共通の成分が含まれているためです。

この現象を、口腔アレルギー症候群(oral allergy syndrome:OAS)と呼びます。
イネ科の雑草に反応する人は、メロン、スイカ、トマトが苦手。

ブタクサ過敏の人は、メロン、バナナ、スイカ、キウイ、ブドウ、イチゴ、マンゴー、ナッツ、ナス、タケノコ、ホウレンソウ、トマト、ゴボウ、セロリ、サトイモなどを、無意識のうちに避ける傾向があります。

どれもおいしい季節の果物・野菜ばかり…ですが、それぞれアクのある食品ですね。

生後半年ごろまでに、その人の免疫システムの基本形が作られていくということがわかってきました(先月号をお読みください)。その頃に、ある特定の物質をたくさん浴びてしまうと、一生、その物質に対して異常反応を起こすようになりかねないのです。

これら多くの食品やスギ、ヒノキなどの花粉のどれに最初に触れたのか、おそらくどの人も分らないでしょう。しかし、首がグラグラしている生後数ヶ月の赤ちゃんに、タケノコやゴボウやサトイモを与えた、というお母さん方はいないはず。

とすれば、やはり空気に浮遊しているスギなどの花粉が一番あやしいことになります。

お子さんが、将来どんなアクのある食品でも、好き嫌いせず食べられるように育てたいと思ったら、お母さんにできることは、花粉の舞う風の強い日に、赤ちゃんを抱っこしてお外にでないことです。本当にそれだけで花粉症やこれらの食品アレルギーが予防できるかはまだ疑問が残るところですが、疑わしきは避けるのが賢明ですね。
「こどもの病気の診かたと看かた (102) 発熱への対応とコツ」
私が幼稚園や小学校の頃、ちょこちょこ発熱していました。
こどもの発熱は、どこの親にとっても一番心配な事件です。そんなある日の出来事。父はどこで入手したのか、スルピリンという解熱(げねつ)鎮痛薬の大瓶から、耳掻き一杯ほどを私に飲ませました。「これでヨシ!」と言って。

翌日早朝にカユミで目が醒めました。体中ジンマシンだらけで、熱もさらにアップ。かかりつけの医院にかけこんだところ、「薬疹ですね。ピリン系の劇薬ですよ」。

実はそれ以前にも、父が私に施した適当な治療のせいで、ひどい目に遭ったこともあるのですが、この薬疹事件以来、父は素人療法を施すのを止めました。

それからは、発熱すると母親が登板です。氷枕を頭の下に、ひたいには少し冷したタオルをのせて目までおおい、私が寝付くまで、こまめに交換してくれました。目が醒めると、母がそばでうつらうつらしていたこともあります。

現在の医学レベルで考えてみれば、このような無理をしない解熱の方法はとても合理的だったと言えます。強力な解熱剤をドカンと与えるやり方よりも、冷たすぎない濡れタオルで、少しずつこまめに放熱をはかるやり方がよほど安全なのです。

40℃の病人のひたいに、0℃に冷えたタオルをのせるとどうなるでしょうか?全身がよく冷えて、早く38℃くらいになると考えるのは間違いです。冷蔵庫で冷たくした放熱シートをオデコにペッタンコしても、ほとんど下がらずにオデコだけが冷えてしまった、という経験をお持ちのお母さんは多いでしょう。

これでは、ひたいだけが冷たくなって、全身の体温は下がらず、冷えて欲しくない手足は冷たくなってしまいます。手足が温かい方が早く解熱するのに、逆効果!どうしてでしょうか? 温度差がありすぎると、自律神経が興奮し、全身の血液循環がおかしくなって、不要不急の手足は血流が悪くなることがあります。

40℃の体温を、体に負担がこないように上手に下げるコツは、まず30℃くらいの濡れタオルをのせて、自律神経をリラックスさせます。体の緊張がゆるめば、血液の循環が良くなり、手足も温かくなって、汗が出やすい状態になります。

次に20℃くらいの濡れタオルをのせます。手足の温かさ、汗やオシッコの出具合などをモニターしながら、少しずつタオルの温度を変えてみましょう。次に10℃のオシボリ。暴れる体をだまし、細心の注意を払って体温をコントロールしていきます。

北風と太陽の話のように、下げたいなら、逆に手足を温めて体を柔らかくします。まずリラックスさせないと熱は下がりません。じわじわと汗がでて、手足も温かくなるような解熱、それが体に負担のこない解熱でしょう。

この冬、2回もインフルエンザにかかって、お子さんの高熱と悪戦苦闘したお母さんは、上手な解熱、安全な解熱について、かなりの知識と経験を積まれたことでしょう。

病気を上手に切り抜ければ、一段とパワーアップした体になれます。
病気になることをこわがらず、上手な対応をマスターしましょう。
あとがきようやくインフルエンザも一段落して、早くも夏かぜが登場です。それにしても今年は春一番が吹きませんね。おかげで私のハナも昨年よりいくらか調子が良いようです。

発行:(医)一木こどもクリニック (責任者 一木貞徳) 2003.3.12 :宗像市東郷394 TEL 0940-36-0880

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