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ろう通信00-

一木こどもクリニック便り 西暦2003年6月(通算78号)

プール熱(咽頭結膜熱)が急増中です。アデノウイルスによる感染症で、高熱が5日間続きます。夏かぜ(手足口病、ヘルパンギーナ)も増加中。サルモネラなどの食中毒菌による腸炎も増えています。とくに子どもさんでは、生ものの料理に注意しましょう。
「こどもの病気の診かたと看かた (109) 組み立て家具にご注意」
住宅建材や家具に使用されている、合成接着剤、木材保存剤、可塑剤、防蟻剤により発生するホルムアルデヒドトルエンキシレン等の有害な揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compound)は、シックハウス症候群の原因として知られています。

平成15年7月1日から発効する改正建築基準法によって、VOCを発生する製品は、住宅用建材としては、きびしく規制されることになりました(参考:国土交通省HP)。
   http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/jutaku-kentiku.html

ホームセンターで大量販売されている組み立て家具もVOCを少なからず放出しますが、規制対象外のようです。古い家具ではVOC発生が少なく、より安全です。

VOCは皮膚や粘膜、結膜などの炎症を起こしますから、全身の痒みや、ハナ血、目の充血などの症状が出現してきます。とくにアレルギーがあるというわけでもないのに、これらの症状に悩んでいる方は、生活環境に化学物質汚染がないか見直しましょう。
「こどもの病気の診かたと看かた (110) マイナスイオン商品の真実 」
健康ブームを反映して、マイナスイオン効果をうたった商品が売れているそうです。
ヘアードライヤー、空気清浄機、安眠枕、トルマリン入りベッド、入浴製品、等々。折込みチラシやDMに目を通せば、数え切れないくらいの商品が並んでいます。

家電製品では、実際にマイナスイオンを発生するものがあるようですが、備長炭、竹炭、トルマリンなどの非家電商品になると、ただ置いておくだけ、水に入れただけではマイナスイオンは発生しないそうです。ただの石ころでスミません…というわけ。

備長炭や竹炭などの多孔性繊維には、消臭・除湿効果があり、そちらは期待できます。でも、マイナスイオンという付加価値は夢だったと思ってあきらめましょう。
参考:http://www.mainichi.co.jp/eye/interview/200206/21-1.html
「こどもの病気の診かたと看かた (111)  SARS(サーズ) 」
重症急性呼吸器症候群(Severe acute respiratory syndrome :SARS)という新しい病気が、突然現れて世界中をパニックに陥れています。(参考:国立感染症研究所HP)
http://idsc.nih.go.jp/others/urgent/update01-1.html

中国で発生したこの新しい病気は、ハクビシン(白鼻心、ジャコウネコ科の哺乳動物で、マングースの仲間)や、タヌキ、アナグマ、ヘビ、コウモリ、キジなどの野生動物に由来する新型のコロナウイルスが原因とのことです。

本来はヒトと接点のなかったウイルスが、野生動物を食用にする現地の習慣によって、調理人を介して人間世界に持ち込まれた可能性があります。いったん人間に感染すれば、ヒトからヒトにくしゃみや咳などの飛沫で感染するため、今回うまく制圧しても冬の“かぜ”シーズンには、ふたたび爆発的に流行すると予測されています。

サーズのように、新たに人間世界に登場してくる伝染病を、新興感染症と呼びます。人類は常に未知の病原体に狙われていて、感染症との闘いに終わりはありません。
「こどもの病気の診かたと看かた (112) 不潔恐怖と強迫神経症」
サーズ予防に手洗いの励行が言われますが、世の中には極端な不潔恐怖の人もいます。

小説「高野聖(こうやひじり)」で知られる作家の泉 鏡花は、アンパンを食べるときに、2本指でつまんだ指先部分に残った“かけら”は惜しげもなく捨てていたそうです。
アンパン自体は大好物でも、自分自身の指はバイキンマン扱いされたわけですね。

こういうクセは、極端になると、生活自体に支障がでるようになります。トイレに行くたびに何十回も手洗いをする(洗手強迫)、下着にあながあくほど洗濯をくり返す、戸締り確認、ガスの元栓が気になる…。精神医学では強迫神経症と呼んでいます。

サーズの報道を見ていますと、患者さんが発生した地域では、マスク着用、病院や地下鉄などの消毒にいたるまで、まさに強迫神経症が流行しているように感じられます。

この過剰反応を藤田紘一郎さんは痛烈に批判します(プシコ2003年5月号、冬樹社)。
「本当は危険な『キレイ大好き』『超キレイ社会』のSARSへの反応」

いわく、「サーズは飛沫感染で、それが成立する距離は2〜3メートル…。原因の新型コロナウイルスは紫外線に極めて弱く、太陽光のもとでは2時間も生きていられない…。やたらに消毒剤をまき散らしても意味がない…」。

まったく同感ですね。消毒液の害の方が、環境にも人体にもよほど悪いでしょう。
もっと怖いのは、マンションぐるみ、病院ぐるみ隔離してしまう、集団ヒステリーになる社会そのもの。サーズで問われているのは、社会病理の方かも知れません。

道に落ちているタバコを拾い、ちょっとフィルターを切りとって、平気で吸うクセのある人がいます。もちろん健康的とは言えません。その反対が泉 鏡花さんタイプ。
手洗いは大切な習慣ですが、度を越すと病気です。何でもホドホドが大切ですね。
【あとがき】今年初めて、私は自家製の梅ッ酒に挑戦してみました。飲めるようになるまで半年ほど待つそうです。最近とみに記憶力が減退しているので、その頃覚えていれば良いですが。

発行:(医)一木こどもクリニック (責任者 一木貞徳) 2003.6.1 :宗像市東郷394 TEL 0940-36-0880

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