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ろう通信00-

一木こどもクリニック便り 西暦2003年8月(通算80号)

今夏は日照不足と水害により全国的な稲作不況だそうです。仙台周辺では7月以来、大型地震に何度も襲われ大きな被害がでました。そして台風による日本列島の寸断。
夏休みはチビッ子たちが大きく成長する時期なのに今年はチャンスが少ないですね。
「こどもの病気の診かたと看かた (117) 熱中症=熱に中(あた)る」
研修医の頃、福岡市の地下鉄工事現場に行きました。作業員さんの健康診断です。
掘削(くっさく)現場の通路口には、直径3メートル位の巨大な扇風機が唸りをあげ、冷水にひたした大きなヤカンが並んでいました。そばの箱には塩が山盛り。

ヘルメット姿のお兄さんやおじさんが、次々に姿を現しては、塩を舐めなめ、ヤカンのお茶をがぶがぶと飲みます。汗を拭き、しばらく風にあたってから、再び暗い穴の中に戻っていきました。昭和53年、景気がよくて、日本が元気だった時代です。

過酷な肉体労働の現場では、熱中症対策はもっとも重要な健康管理の一つです。
「そういえば俺の人生、ずっと塩ばかりなめてきたなあ」と、おじさんが思ったかどうかは知りませんが、塩をなめながらお茶を飲むのが、熱中症予防では正解。

高温に高湿度が加わると非常に危険。屋外だけではありません。体育館など風通しの悪い場所に多人数が集まる対校戦などでは、屋内といえども熱中症は起こりえます。

激しいのどの渇きにつられて、水やお茶だけを一気飲みすると、血液中のナトリウムは急速に低下して、多くの臓器が働きにくくなります。36℃でいちばん働く体のシステムが、高温で弱っているところに、低Na血症の追い討ち ⇒ スゴクアブナイ。

水分のとり方ですが、しばらく飲み込まずにためて、口の粘膜を冷却します。
冷たいオシボリで拭いたり、あおいだり、体表面の温度を下げる工夫も有効です。

日本気象協会が提供している熱中症のサイトは、各地の熱中症発生を予測するのに参考になります。http://tenki.ip/heat/index.html
「こどもの病気の診かたと看かた (118) お盆と喘息発作」
毎年、お盆の時期は、喘息の発作がおこりやすい条件がそろっています。
線香(屋内でもお墓でも)、花火、バーベキュー、こどもだけでなく大人も集まるのでタバコの煙にふれ易い、帰省先の客用寝具(ふだん使用しないのでカビが多い)など。

移動の往復でエアコンの効いた車内に長時間、これも気管支には良くない環境です。
十分に対策を立てておでかけしましょう。健康保険証も忘れずに。

準備が整いましたら、帰省されて、心ゆくまでご先祖様にお会いください。ナム〜。
「こどもの病気の診かたと看かた (119) 少年事件と大人社会の病理 その1」
7月に、長崎市で、12歳の少年による4歳男児の誘拐殺傷事件が発生しました。
近年、未成年者による凶悪事件が急増していますが、それにしても・・・。
子育て中の親の多くは、非常なとまどいを感じ、思考停止状態になったと思います。

加害少年は、学校の成績はとても優秀だったそうですが、成育歴や人格に事件のカギが隠されているのではないかとの観点から、精神鑑定が実施されるそうです。

非凡な学習能力を有する一方で、非常に幼稚な一面、この危ういアンバランスこそ、加害少年の人格的特徴ではないかと言われています。

思春期に入ると、大人が予想もしないことを考えているこどもは多いのです。
知的に優れ、情報処理能力、推理能力の高いこどもほど複雑なことを考えるでしょう。

現在は、インターネットや携帯電話の普及で、大人社会とこども社会とに、情報量については差がない時代です。大人と同質、同量の情報をこどもも手にしているのです。

しかし、大人には育っているのに、多くのこどもにはまだ十分に育っていないものがあります。それは善悪の判断、倫理的・道徳的・宗教的価値の観念などです。
それらをこどもに刷り込んでいくのが、周囲の大人、とりわけ両親の仕事になります。

凶悪な少年犯罪が起こるたびに、少年法の適用年齢が下げられ、厳罰化しています。

しかし、それはいたちゴッコに過ぎません。米国では小学生による凶悪事件も発生しています。日本で同種の事件が起こったら、小学生にも成人と同じ厳罰を適用しようとするのでしょうか。そんなことをしても少年事件の歯止めにはならないでしょう。

少年事件の増加に歯止めをかけ、私たちの社会を希望にあふれた、安全で暮らし易い社会にするためには、まず大人社会を変革していくことが大切ではないでしょうか。

私たちは、次の世代に伝えるべきものを伝えず、伝えてはいけないものを伝え、見せてはならないものを見せ、与えてはいけないものを与えてしまったのではないか。
これから数回にわたり、少年犯罪に対する私の考えをお伝えします。(以下次号)
「こどもの病気の診かたと看かた (120) シックパソコン症候群?」
パソコンの電源を入れると、機器の加熱を防ぐために内部のファンが回転します。

するとその風で、基盤に蒸着している溶媒から揮発性の有機化合物が発生します。
パソコン作業を長く続けていると頭が痛くなります。ドライアイが主な原因ですが、揮発性の有機化合物も関係ありそうです。作業中は部屋の換気に注意しましょう。
あとがき暑いのか寒いのか分らない変な夏ですが、エアコンによる寝冷えに気をつけましょう。夏休みも残り2週間です。受験生のお兄さんお姉さんたち、少しは勉強が進みましたか?

発行:(医)一木こどもクリニック (責任者 一木貞徳) 2003.8.13 :宗像市東郷394 TEL 0940-36-0880

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