一木こどもクリニック便り 西暦2004年1月(通算85号)
新しい年は数年ぶりの大寒波でスタートしました。寒かったこどもの頃を思い出しますね。
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「こどもの病気の診かたと看かた (129) 今冬のインフルエンザ」
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今冬はインフルエンザの流行が、例年より遅く始まりました。
インフルエンザワクチンに使用されているのは、A香港、Aソ連、Bの3つのウイルスですが、このうち、A香港型として、A/パナマというウイルスが使用されています。
昨年度に流行したA/香港のうち、6割が予想どおりのA/パナマで、残る4割は、A/福建という変異ウイルスでした。おなじA香港型でも、A/パナマとA/福建では顔つきが異なりますので、ワクチンを受けていても、A/福建ウイルスだとかかることがあります。
実際、インフルエンザワクチンの予防接種を受けた人でもかかっている例がありますので、安心、油断はできませんが、それでも受け続けることが大切です。
診断は、細い綿棒で鼻汁を採取して行う迅速(じんそく)診断法が実用化されています。
結果はすぐに判明します。コツは、綿棒をあらかじめゆるやかに折り曲げて、綿の部分を深く入れること。きついですが、非常にはっきりと結果がでます。
近年、A、Bの両方に有効な抗ウイルス剤(商品名タミフル)の登場で、インフルエンザという病気は、ずいぶん治療しやすい病気になりました。かかってからでも何とかなるようになってきたのです。しかし基本的考え方(治療戦略)は、あくまでワクチンによる予防です。
今年は十分量のワクチンを用意したそうですが、現在は人々の関心が高くなっており、需要には対応できなかったと思います。相対的なワクチン不足はまだ当分つづきそうです。
今年できなかった方は、次のシーズンは必ず受けるようにしてください。
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「こどもの病気の診かたと看かた (130) 冷凍食品と冷え 」 |
スーパーで、お子様カートにチビッ子を乗せて冷凍食品コーナーをグルグルしているご両親をよく見かけます。お目当てはアイスかな。とても楽しそうです、が…
冷凍食品のブースからあふれた冷気は、空気よりも重いので、スッポリとお子様の全身をおおいます。グルグルが長すぎると、お子様は冷えひえのおひやになります。
こどもさんの好きなものをたくさん買って帰宅すると、大事なお宝がぐったり。
親は慌てます(ヒ、ヒエー!何で?) → 小さいこどもさんは、冷えに弱いのです。
冷凍食品の付近では、小さいお子さんは抱っこしましょう。
そのほうが、お子さんにも、お父さんお母さんの温かさが伝わりますよ。
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「こどもの病気の診かたと看かた (131) 戦後復興と日本の姿」
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第二次大戦終結から59年。日本は、戦後初めて、自衛隊を外国に派遣しています。
一国の戦後復興という大きな事業を、日本は、文武両道で援助することになります。
日本は、自らの戦後復興のノウハウを、国外でも生かすことができるでしょうか。
そのことを考察する前に、敗戦直後の日本がどのような姿勢で、日本の国家と国民の将来像を描いていたかを振り返ってみたいと思います。
荒れた國土を平和な緑で 昭和23年 全國緑化運動
民主國家は教育から 昭和23年 教育復興運動
植えて育てよ吾等の郷土 昭和24年 國土緑化運動
当時の国家的キャンペーンの一端を垣間見ることができるでしょう。
昭和21年10月には、第一回国体が開催されました。
また各地で、通信展覧会、貿易博覧会、こども博覧会などがあいついで催されました。
赤十字の共同募金は、昭和23年に開始されています。
荒れて焦土(しょうど)と化したふるさとや街を、親しい人を戦争で失った国民の心を、何とか復興しようと、日本の国はこうして必死に努めてきたのです。
そして半世紀以上が過ぎました。
ふるさとの山や川は、井戸端会議で賑わった街は、先生に見つからないように、友達とふざけ遊んだ学校は、この半世紀でどのように変ったのでしょうか。
植林? スギやヒノキの花粉症で苦しむ国民は30%に達します。
学校教育は崩壊し、心身症やうつ病に悩んで長期休職の先生は増加の一方。
汚職、詐欺、凶悪犯罪・・・。
将来をになうべき若者の多くは、明確な将来像を描くことができません。
こうして見ると、日本が援助できるのは、お金や品物しかないことがよく分ります。
他者に示すべきモデル、張るべきキャンペーン、そんなものは何もないでしょう。
歴史的時間でみれば、日本の戦後復興はどこかで道を誤ったように思えてなりません。
日本は世界の中で、信頼を得つつ期待される援助国に本当になれるのでしょうか。
他国の復興に援助を試みる中で、自らの戦後復興そのものを問い直す努力が、私たちには必要だと考えます。
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【あとがき】未(ひつじ)年から申(さる)年へ交代。昨年末から、米国でのウシ海綿状脳症(BSE)騒ぎに始まり、韓国でのブタコレラ、わが国の鯉ヘルペス、年明けて明るみにでた半年前の卵出荷事件、トリインフルエンザ騒動・・・etc。動物が話題になった年末年始でした。この一月で阪神大震災から9年が過ぎました。被災者の方々の今も続くご苦労を思っております。早く光あふれる春が訪れることを祈ります。
さて、昨年末から執筆をお休みしておりましたが、今年もふくろう通信をよろしくお願いいたします。 |
発行:(医)一木こどもクリニック (責任者 一木貞徳) 2004.01.31 :宗像市東郷394
TEL 0940-36-0880
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